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外国人を受け入れる企業が知っておくべき雇用契約書の作り方(完全ガイド)

はじめに:外国人雇用で「雇用契約書」は最重要書類

外国人を採用する際、最も重要なのが雇用契約書の適切な作成です。
日本人の採用でも契約書は必須ですが、外国人雇用においては、入管法・労基法・その他法令の審査対象となるため、内容の不備があると在留資格の不許可やトラブルの原因になります。

特に、技能実習・育成就労・特定技能・技人国など、どの在留資格でも、雇用条件・職務内容・給与体系の明示が最重要ポイントです。

この記事では、外国人雇用の雇用契約書を作成する際に企業が必ず押さえるべき項目・注意点・作成の流れ・NG例まで徹底解説します。

外国人雇用における雇用契約書は、日本人以上に重要です。その理由は以下のとおりです。

理由1:入管審査の主要書類になる

在留資格の許可・更新の際、雇用契約書が内容審査の主軸になります。

・給与が最低賃金を下回っていないか
・仕事内容がビザと一致しているか
・労働条件が不適切でないか

これらはすべて契約書で確認されます。

理由2:労基法の違反を回避する

誤った雇用条件で採用すると、

・未払賃金
・違法残業
・不当な拘束

など、労務トラブルの原因となり、高額の罰金や行政指導につながります。

理由3:外国語の壁による誤解を防ぐ

日本語が不十分な外国人には、労働条件を誤解したまま働くケースが多いため、契約書で明確に示すことがトラブル防止に直結します。

雇用契約書に必ず記載すべき項目(外国人雇用版)

以下は、外国人雇用で必須となる項目です。
労基法で義務化されている項目に加え、入管審査で必要な情報も含んでいます。

必須項目一覧

① 契約当事者

  • 会社名・所在地

  • 代表者名

  • 労働者の氏名・住所・国籍

② 就労場所

  • 本社/支店/現場

  • 異動の可能性の有無

③ 職務内容(業務内容)

ここが最も重要。
在留資格の活動内容と一致している必要があります。

例:

  • 「特定技能(介護)」→ 介護業務

  • 「技人国(エンジニア)」→ システム開発業務

  • 「育成就労」→ 指導された技能の実践業務

④ 契約期間

  • 有期・無期

  • 初回契約期間

  • 試用期間の有無

⑤ 労働時間

  • 始業・終業時刻

  • 休憩時間

  • 所定労働時間

  • シフト制かどうか

⑥ 休日・休暇

  • 週休何日か

  • 年次有給休暇の付与

⑦ 賃金(最重要)

  • 基本給

  • 各種手当

  • 控除項目

  • 支払い日/締め日

  • 時間外労働の割増率

  • 住宅費・食費の負担額(技能実習・育成就労の場合必須)

⑧ 社会保険加入の有無

  • 健康保険

  • 厚生年金

  • 雇用保険

⑨ 退職・解雇のルール

  • 自己都合退職

  • 契約満了

  • 解雇事由

⑩ 住居の提供(該当者のみ)

  • 寮費

  • 備品代

  • 光熱費

  • 入退去時費用

⑪ その他(外国人特有)

  • 母国語での説明の有無

  • パスポート管理は企業が行わない旨

  • 強制貯金はしないこと

  • 宗教配慮の有無

在留資格別に必要となる契約内容の違い

■ 技能実習

  • 実習計画と同じ内容にする必要あり

  • 賃金は最低賃金以上(実習生ごとに名目賃金の明示)

  • 寮費は適正額で原価超過は不可

■ 育成就労

  • 3年間の育成計画と契約書を一致させる

  • 業務内容は「技能を伴う現場業務」が中心

  • 途中での移籍ルールに違反しないことが重要

■ 特定技能

  • 業務内容が分野試験と一致しているか確認

  • 支援計画と契約内容の整合性が必須(登録支援機関が関与)

■ 技人国(技術・人文・国際)

  • 大卒または実務経験に基づく専門業務

  • 事務・単純作業とみなされないように業務記述が必要

多言語版の契約書は必要か?

日本語版は必須

入管提出書類は日本語で作成する必要があります。

母国語訳も作成するのが望ましい

誤解防止のため、母国語版(英語・ベトナム語・インドネシア語など)を作る企業が増えています。

特に技能実習・育成就労ではトラブル防止に必須レベル。

トラブル防止のためのチェックポイント

  • 仕事内容がビザの内容と一致しているか

  • 賃金体系が最低賃金以上か

  • 福利厚生・控除額が適正か(寮・備品)

  • 時間外労働が正しく記載されているか

  • 試用期間中の給与が不当ではないか

  • 職場住所の変更がある場合の記述があるか

  • 契約書と実態が一致しているか(入管が最も重視)

雇用契約書作成の流れ(企業がやるべきステップ)

  • 在留資格を確認し、必要な業務・給与条件を整理

  • 労働条件通知書・雇用契約書のベースを作成

  • 社会保険・就業規則との整合性をチェック

  • 賃金(手当・控除)を最終決定

  • 外国人本人と説明面談

  • 日本語版を締結 → 必要に応じて母国語版も作成

  • 入管申請に添付(在留資格取得・変更・更新)

  • 採用後も条件を変更する場合は必ず書面で再契約

よくある質問(FAQ)

雇用契約書がないとビザ申請できますか?

不可です。全在留資格で提出が必要です。

契約が日本語だけでも大丈夫?

→ 申請上は問題ありませんが、トラブル防止のため母国語版を推奨します。

外国人は試用期間中に解雇できますか?

→ 日本人と同様、正当な理由が必要。
 試用期間だからといって自由解雇は不可。

契約内容は後から変更できますか?

→ 可能ですが、その場合は

・契約書の再締結
・入管への届出

が必要なこともあります。

まとめ

外国人雇用における雇用契約書は、
入管審査・労基法遵守・トラブル防止の要となる最重要書類です。

特に以下は必ず押さえる必要があります。

  • 業務内容をビザと一致させる

  • 賃金(基本給・控除・手当)を明確にする

  • 労働時間・休日・社会保険を正確に記述

  • 契約内容が実態とズレないよう運用する

正しい契約書は、外国人に安心して働いてもらう基盤となり、
企業のコンプライアンス強化にも直結します。

必要であれば、雇用契約書のテンプレート(日本語版・外国語版)も作成できますので、お気軽にお知らせください。