Skip to main content Scroll Top

在留資格と法律

外国人材の受け入れが拡大し、企業の人材戦略において「在留資格」と「法律」の理解はこれまで以上に重要性を増しています。特に、人手不足が深刻化する製造業・介護・農業・建設などでは、外国人材の活用なくして事業の継続が難しいケースも増えています。

しかし、外国人を雇用する際には、日本人の採用とは異なる入管法・労働法・在留管理といった複雑な法制度を正しく理解し、コンプライアンスに沿った運用を行うことが求められます。
また、2027年には技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労制度」が導入される予定で、外国人雇用に関するルールは今後さらに変化していきます。

このページでは、外国人材の雇用を検討する企業や、実際に外国人を雇用している企業のご担当者に向けて、「在留資格とは何か」「法律との関係はどうなっているのか」「コンプライアンスはどう守るべきか」を、わかりやすく・網羅的に解説します。

外国人雇用のリスクを回避し、安心して受け入れを進めるための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。

■在留資格の定義

在留資格とは、外国人が日本で行うことのできる活動内容を法的に定めたもので、出入国管理及び難民認定法(入管法)によって規定されています。

日本には30種類以上の在留資格が存在し、在留資格によって「働ける活動」「働けない活動」「働ける範囲」が明確に区分されています。

■在留資格の3つの分類

大きく分けると次の3カテゴリに分類できます。

就労が認められる在留資格

特定技能、技術・人文知識・国際業務、高度専門職、企業内転勤 等
→ 日本で働くことを前提とした資格。

就労は原則不可だが資格外活動許可でバイト可の資格

留学、家族滞在 等
→ 留学生がアルバイト可能なのは資格外活動(原則週28時間以内)。

就労制限がない在留資格

永住者、日本人の配偶者等、定住者 等
→ 就労制限がなく、業種・職種を問わず働くことが可能。

外国人雇用に必須の法律と企業の責任

外国人を雇用する際は、以下の法律に違反しないよう特に注意が必要です。

■入管法(出入国管理及び難民認定法)

外国人雇用の基盤となる法律。
不法就労助長罪や在留資格外活動の管理が特に重要です。

企業が違反しやすいポイント

  • 在留資格で許されていない業務をさせる

  • 有効期限切れの在留カードに気づかない

  • 特定技能・技能実習生を別の業務に転用させる

  • 派遣・出向が禁止されている制度で同様の扱いを行う

→ 故意でなくても罰則の対象になる場合があります。

■労働基準法・最低賃金法などの労働関係法令

外国人も当然「日本人と同じ労働法令」が適用されます。

最低限守る必要があるポイント

  • 最低賃金以上の給与

  • 時間外労働に対する割増賃金

  • 雇用契約書の母国語翻訳

  • 労働時間・休日の適正管理

  • 社会保険加入(適用事業所は必須)

■外国人雇用状況届出(ハローワーク)

企業は外国人を雇用する場合、必ずハローワークに「外国人雇用状況届出」を提出しなければなりません。
これを怠ると罰則の対象となるため注意が必要です。

在留資格の変更・更新の手続き

■在留資格の変更(Change of Status)

例:留学 → 技術・人文知識・国際業務
例:技能実習 → 特定技能1号

企業が準備するもの

  • 雇用契約書

  • 会社の概要説明資料

  • 決算書・直近の財務資料

  • 業務内容が在留資格に適合する説明書

■在留期間更新(Extension of Period of Stay)

契約更新・業務継続などの場合に必要。
提出期限は「在留期限の3か月前から」。

不許可になる典型例

  • 会社の財務状態が悪い

  • 実際の業務が在留資格の内容と異なる

  • 勤怠不良・理由なき長期欠勤

  • 社会保険未加入

■在留資格の取消し制度

入管法の厳格化により、以下の場合は取り消し対象になります。

  • 虚偽申請

  • 実習計画違反

  • 実際の業務が資格内容と違う

  • 3か月以上の無就労、無活動

企業も連帯責任を問われやすいため、管理体制が必須です。

育成就労制度(2027年〜)と在留資格の関係

技能実習制度は廃止され、2027年から「育成就労制度」へ移行します。

育成就労制度で導入が想定されるポイント

  • 「人材育成」を重視した制度設計

  • 労働者の転籍(事業所変更)が可能に

  • 賃金・待遇がより厳格に管理

  • 不法就労・人権侵害対策の強化

  • 監理団体(協同組合)の責任も強化

在留資格としては「新たな就労系資格」になる見込み

現行の技能実習(技能実習1号・2号・3号)は廃止され、
育成就労(仮称)→特定技能への接続がよりスムーズになると見られています。

企業が早期に準備すべきは以下の通り:

  • 適正な教育環境・指導体制

  • 労働条件書・就業規則の整備

  • 日本語教育の提供体制

  • 転籍可能制度を踏まえた労務管理

  • 法令違反のないクリーンな環境づくり

企業が守るべきコンプライアンスと実務チェックリスト

外国人雇用 8つの必須チェック

  1. 在留資格・在留期間を確認

  2. 在留カードは常にコピーを保管(最新のもの)

  3. 雇用契約書の多言語化

  4. 不法就労につながる業務の禁止

  5. 36協定の遵守

  6. 寮・生活サポート体制の整備

  7. 日本語学習環境の確保

  8. ハラスメント防止体制

 

よくある質問(FAQ)

Q. 在留資格が切れそうな従業員はいつまでに更新すべき?

3か月前から申請可能。期限ギリギリはリスクが大きいので早めに申請を。

Q. 別の部署の業務を手伝わせるのは違法?

在留資格の範囲を逸脱する業務は違法。業務変更前に必ず確認が必要。

Q. 育成就労制度が始まると技能実習生はどうなる?

段階的に移行措置が取られる見込みで、現行実習生も新制度への移行が可能となる方向。

まとめ

正しい知識が外国人雇用の成功につながる

在留資格と法律の理解は、外国人を雇用・受け入れるうえで最重要ポイントです。
特に2027年の育成就労制度の導入に向けて、企業側には以下の準備が求められます。

  • 法令遵守の徹底

  • 就労内容・業務範囲の明確化

  • 適切な労務管理

  • 日本語教育・生活支援などの環境整備

今のうちから在留資格と法律を正しく理解し、外国人材が安心して働ける職場を整えることが、企業の競争力にも直結します。