はじめに
外国人材の受け入れを検討している企業にとって、最も重要なのが「監理団体の役割」と「受入企業の責任」を正しく理解することです。
特に、技能実習制度・育成就労制度・特定技能などでは、受入体制が不十分だったり、責任の分担を誤解したりすると、重大なトラブル・失踪・入管からの指導・受入停止につながる可能性があります。
この記事では、監理団体の役割・受入企業の責任・法律上の義務・トラブル回避ポイントまで、実務で使える内容を徹底的に解説します。
もくじ
監理団体と受入企業の違いとは?
外国人雇用の代表的な制度である技能実習・育成就労では、企業(実習実施者)が単独で受け入れを行えず、必ず「監理団体」を通じて受け入れる仕組みになっています。
■ 監理団体とは
技能実習生・育成就労者の受け入れを管理し、企業を指導・監督する組織(非営利団体。組合形式が多い)。
主な役割
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実習計画作成のサポート
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入管申請のサポート
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日本語教育・生活指導
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定期監査(1〜3ヶ月に一度)
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トラブル対応
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実習生の保護
■ 受入企業(実習実施者)とは
外国人が実際に働く会社。
現場管理・労働環境整備・生活支援などの中心的な責任を負う。
主な役割
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実習計画どおりの業務提供
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賃金支払い
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生活・安全管理
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就業環境の改善
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外国人の指導・育成
監理団体の主な役割と責任
監理団体は、受入企業を「監査・指導」する立場にあり、技能実習法/育成就労制度上、明確な義務が定められています。
監理団体の役割一覧
① 受入企業の事前調査(適正企業かチェック)
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過去の法令違反
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賃金未払いの有無
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人員配置が適正か
などを確認して受入可否を判断。
② 外国人受入の手続きサポート
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送り出し機関との調整
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在留資格申請書類の準備
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実習計画の作成・提出
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育成計画の策定支援
③ 定期的な監査(1~3ヶ月に1回)
法令遵守と適正受入をチェックし、企業へ是正指導。
④ 外国人の相談支援
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通訳対応
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生活相談
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人権侵害の早期発見
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トラブル仲裁
⑤ 不正受入の防止
技能実習法では「不適切な企業を排除する義務」が課されている。
⑥ 緊急時対応
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失踪
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トラブル
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けが・事故
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刑事事件
などの際、企業と協力して問題解決にあたる。
受入企業(実習実施者)の責任
受入企業の責任が最も重いと言っても過言ではありません。
技能実習法・労基法・入管法によって、多くの義務が設定されています。
受入企業の責任一覧
① 実習計画どおりの業務提供
実習生・育成就労者に単純作業・別業務をさせることは違法です。
② 適正な労働条件の提供
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最低賃金以上の給与
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時間外割増
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法定休日
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36協定の提出
これらは必須。
③ 安全衛生管理
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現場で事故が起きやすい業種は特に重要
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保護具提供
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研修・教育の実施
④ 日常生活のサポート
技能実習・育成就労では以下が求められる:
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住居の確保
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生活指導
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相談体制の整備
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公的手続きの同行
⑤ 適切な人員配置
外国人を放置したり、指導者不在はNG。
⑥ 書類管理・報告義務
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雇用契約書
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賃金台帳
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勤怠記録
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実習計画の進捗
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入管への報告
などの管理が必要。
⑦ 不正行為の禁止
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強制貯金
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パスポートの取り上げ
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暴力・ハラスメント
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罰金制度
これらはすべて違法。改善命令の対象。
法律上の義務(入管法・労基法・技能実習法)
■ 入管法(出入国管理法)
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在留資格(ビザ)に合った業務を行わせること
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不法就労助長罪に注意
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雇用開始・終了時の届出義務
■ 労働基準法
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賃金・残業・休日
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契約書(労働条件通知書)の交付
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適切な労働時間管理
■ 技能実習法
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監理団体と受入企業の責任を明確化
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外国人保護が最優先
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定期監査・報告義務
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実習計画と業務内容の一致が必須
よくあるトラブルと原因
① 実習内容と違う単純作業をさせた(法律違反)
→ 技能実習法違反で受入停止となるケースが増加。
② 残業代未払い・寮費過大徴収
→ 労基署・入管・監理団体の三重指導になることも。
③ 不適切な現場指導で離職・失踪
→ 外国人が不安になり逃げ出す主要原因。
④ 監理団体が機能していない
→ 監査不足、通訳不足、サポート不足など。
責任分担を明確にするためのチェックリスト
■ 受入企業が確認すべきポイント
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実習内容と業務が一致しているか
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労働時間が適切か
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外国人の生活環境を整えているか
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パワハラ・暴力・差別がないか
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監理団体との情報共有ができているか
■ 監理団体が確認すべきポイント
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定期監査の実施
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実習生の生活フォロー
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問題発生時の迅速対応
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法令遵守の指導
優良な監理団体を選ぶポイント
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監査を「形だけ」で行わない
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監理費が適正
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トラブル対応力が高い
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多言語スタッフが在籍
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企業への指導が丁寧
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実習生への教育体制が整っている
悪質な監理団体は、企業にとっても外国人にとっても重大なリスク。
受入前に必ず複数の団体を比較検討することが重要です。
まとめ
外国人材の受け入れでは、「監理団体の役割」と「受入企業の責任」を明確に理解することが成功の第一歩です。
特に以下のポイントが重要です。
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監理団体=外国人の保護+企業の監査
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受入企業=現場管理・生活支援の責任
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法律(入管法・技能実習法・労基法)の遵守が必須
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監理団体選びは慎重に
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情報共有と連携がトラブル防止の鍵
適切な体制を整えることで、外国人材も企業も安心して成長でき、長期的な人材確保・企業の発展につながります。